ある性感染症検査キット紹介サイトを見ていたら、こんなことを書いてありました。

『近年、性病感染者は増え続けています。女性もカンジダ、トリコモナスなどの性感染症は増加傾向にあります。』

これって、ホントでしょうか?

そもそも、カンジダやトリコモナスなんて、全国規模での感染者調査なんてやっていないと思うのですが・・・。

 

◇性感染症の動向は正確に分かるのか?

先ほどの記事を載せたサイトでは「増え続けている」と書いた根拠を何も示していません。いったいどんな数値データをもとに「増え続けている」と言えるのか。

一番肝心な点が全く触れられていません。

実は私が知る限り、性感染症で感染者の人数を正確に把握できるのはHIV(エイズ)感染者と梅毒感染者それにB型肝炎、C型肝炎の感染者だけです。その他の性感染症については正確な動向は分かりません。

現在の日本では感染症法と言う法律があって、性感染症の中でも全数報告と定点報告の2種類があります。

●全数報告の性感染症

日本中、どこの医療機関で見つかっても保健所へ届け出る義務がある性感染症。感染者の全数を把握しています。

HIV(エイズ)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎など。

 

●定点報告の性感染症

予め指定された全国960ヶ所ほどの医療機関で見つかった場合のみ報告される性感染症。言わば抜き取り検査みたいなもので、流行の動向を見るための調査です。従って感染者の全数は分かりません。

クラミジア、淋菌、尖圭コンジローマ、性器ヘルペスなどです。

詳しくは下図を参照ください。国内112種類の感染症は以下のように分類されており、それぞれに報告方法が決められています。

定点報告と全数報告
1.定点報告と全数報告

先ほども書きましたが、カンジダ、トリコモナスは定点報告の対象にもなっていません。だから「増加傾向にある」と指摘するなら、いったいどのデータを基にそう判断できるのか示す必要があると思います。

 

◇最新性感染症動向グラフ

では、厚生労働省がネット上で公開している全数報告と定点報告の性感染症について、現在公開されている最新データを見て見ましょう。

冒頭に書いたような「性感染症は増え続けている」といった事実はあるのでしょうか。

■HIV感染症(全数報告)

HIV推移
図2.HIV感染者の推移(姉妹サイト:HIV検査完全ガイドより引用)

男女ともにここ数年は横ばい状態です。このデータは全数報告ではありますが、HIV検査で感染が見つかった人だけです。HIV検査を受けていない潜在的HIV感染者が存在します。

ただし、エイズ動向委員会の報告によれば、様々なデータから現状ではHIV感染者が増加傾向にあることを示すデータはないそうです。つまり、現状は横ばいとの判断です。

 

■エイズ(全数報告)

エイズ推移
図3.エイズ患者の推移(姉妹サイト:HIV検査完全ガイドより引用)

エイズ患者もまた横ばい状態です。こちらは全数報告の上に潜在的エイズ患者と言うのは考えにくいので、かなり正確な全数だと思います。

仮に潜在的HIV感染者が報告件数の何倍もいれば、当然ながら数年遅れでエイズ患者もまた急増するはずです。今のところそうした傾向は見られないようです。

 

■梅毒感染者(全数報告)

梅毒男女推移
図4.梅毒感染者の推移(姉妹サイト:性感染症検査完全ガイドより引用)

梅毒感染者に限っては、まさに急増中です。図4は平成28年までの感染者推移を示していますが、この5年間で感染者は5倍にも急増しています。

2016年(平成28年)には42年ぶりに4,000人の大台を突破しました。

まさに梅毒こそは「近年感染者が急増している」と断言できる性感染症です。

 

■クラミジア感染症(定点報告)

クラミジア推移
図5.クラミジア感染者の推移(姉妹サイト:性感染症検査完全ガイドより引用)

ここからは定点報告のデータに基づく動向グラフです。全数ではありませんのでそのつもりでご覧下さい。

図5を見る限りでは男性も女性もクラミジア感染者が増加し続けているとは言えません。横ばい状態です。

 

■淋菌感染症(定点報告)

淋菌推移
図6.淋菌感染者の推移(姉妹サイト:性感染症検査完全ガイドより引用)

淋菌感染者についても定点報告データではありますが、横ばい状態に見えます。増加傾向には見えません。

 

■尖圭コンジローマ(定点報告)

尖圭コンジローマ推移
図7.尖圭コンジローマ感染者の推移(姉妹サイト:性感染症検査完全ガイドより引用)

尖圭コンジローマも定点報告です。図7を見ると男性は増加傾向、女性は横ばいのように見えます。

 

■性器ヘルペス(定点報告)

性器ヘルペス推移
図8.性器ヘルペス感染者の推移(姉妹サイト:性感染症検査完全ガイドより引用)

性器ヘルペスも定点報告です。図8を見ると男性、女性ともに増加傾向のように見えます。

なお、グラフ化に使用したデータは以下の通りです。

●エイズ動向委員会報告データ

●厚生労働省「性感染症報告数」

 

◇まとめ

さて、全数報告であるHIV、エイズ、梅毒、そして定点報告であるクラミジア、淋菌、尖圭コンジローマ、性器ヘルペスの動向を見てきました。

データから言えることは、

●梅毒感染者は間違いなく急増している。

●その他の性感染症は横ばいか微増傾向にある。

と言うことです。

また、感染者が「減少している」、「減少傾向にある」と言い切れる性感染症もありませんでした。

いずれにしても国内全体の動向と、あなたや私の感染リスクが直結している訳ではありません。そうしたデータとは関係なく、常に性感染症予防に気を付けることが大事です。

また感染不安があれば早期に検査を受けることも大事です。

今回は主要な性感染症について、この15年間の感染者動向をグラフから検証してみました。

STDキットフッター1

STDキットフッター2